『LUNGS』の備忘録

LUNGS

 


2021.11.3-11.9

大阪 サンケイホールブリーゼ


2021.12.5-12.23

東京 東京グローブ座

 


※これはただの一個人が記憶を辿って書き出したものなので細かいところは抜けてたり順番間違ってたりします。

自覚はあります、薄目で、優しい心で見てください。

こここうじゃなかった?って補填はしてくれると喜びます。その時は優しくね。

※役名もないのでMとWで呼んでる、って話もされてたのでm./w.で分けてます。

公開されてるビジュアルなんかではMとFだけど。

 


w.赤ちゃん?!

m.深呼吸

w.将来のため、

m.生活を変えないとね

w.地球のため減らさなきゃ!

m.それはそう、そうなんだけど

 


m.このこと切り出すのは君の方だと思ってたよね

準備できてるよって僕にプレッシャーかけてさ

w.プレッシャー?そんなのかけてない

 


m.たださぁ、ずっと考えてたんだ

w.考えてるならどうしてなんで私に言ってくれなかったの?

m.だから今こうして話をしてる

w.ええあなたは話をしてるわね

m.二人で話をしてる

w.あなたが今ここで切り出した話、

m.僕が今切り出そうとした話

w.あなたが今、ここで切り出そうと決めた話、IKEAで。

 


w.あのパンダ持った子じっとこっちみてる。

m.過呼吸かなぁ?

w.大丈夫よ〜こわくない

 


w.とりあえず列から抜けない?

 


m.もし重すぎるなら箱に戻そう

箱に戻して鍵をかけて君の気持ちが落ち着いたらまた話せばいい

ビビったよね

w.ビビってない、ただ驚いただけビビってないただ…超高層ビルの上から私

m.ビビってる

w.えぇ、ビビってるわよ!!!

 


w.こんなの会話じゃないじゃあこれは何って言われたらわかんないけど

 


w.一旦箱に戻していいかな

m.もちろん

w.ちょっと歩いて来ようかな、10分。車のとこで会おう

 


w.どうしたの?

m.10分って言ったよね

w.ごめんね〜考えたかったのよ。あ、雪。

m.コートも着てないし。ってタバコクサッ。

w.異常気象

m.観測史上一番寒い冬だってさっき言ってた。

一番暑い夏に一番寒い冬。

w.なのにエンジンかけっぱなし?

m.ラジオを聞いてた。心配してる。

w.いらない!

 


w.買いたいもの買えたんだっけ?

m.中戻ったんだけどさぁ…

 


w.赤ちゃん?

m.ずっと考えてたんだ、これは僕たちの、これはお互いの

w.この話はする、するけど今じゃない

m.だよね

 


w.運転していい?

m.もちろん

w.あなたのデモかけてよ

m.まだ出来てない

w.そっか

 


m.じゃあいつが正解なんだろ

w.少なくとも今じゃなかった。ごめん

m.何も言うんじゃなかった

w.あなたは間違ってない、あなたは。いつかはしなくちゃ。

m.だよね。

w.私たちずっと若くない。

 


w.どうぞ

m.どうぞってなに?もう全部言ったよ

w.じゃあもう一回言って聞こえなかったから、私はカートを押してランプを抱えて息もできなかったから!

m.だいたい分かったでしょ!

w.と、思う

m.さっきほどビビらないかもね

w.参ったな、参りました!

 


w.で、どうするの私たち

m.とりあえず駐車場は出よっか

w.なにそれ嫌味?

m.君の意見が聞きたい、そりゃそうだよ

w.そうね、そうよね。

m.どうぞ?

w.意見、意見なんてわかんないわかんないわよこんなの顔面パンチの後に数学の問題を解けって言ってるようなもので

m.顔面パンチ?!

w.だいたいこんなこといきなり人に言うなんてありえないから!

こんなことして私が理性的に答えられると思わないで!言ってることわかるでしょ?

 


w.はいわかりましたはい、そうしましょう

m.僕は質問してるわけじゃない

w.質問じゃないの?

あなたがこの話し始めたよね?

m.どうかな?

w.あなたがこの話を初めてそれに私がはいっていってるの。

 


w.わかった。声に出しながら考えるから私が間違ってることとか馬鹿みたいなこと言っても割り込まないで聞いて。

私に考えさせて。いい?

 


w.それに私だってずっと考えてたよ抽象的なこと言うと私だってずっと欲しかったよ。私はそういうタイプの人間なんだって。

それが人生における私の目的、地球における私の役割なんだって。

でもずっとこんなこと考えてたわけじゃない。

あなたが質問するから、質問じゃないとしても。

あなたがこの話を切り出したからこういろいろ考えてるだけで。

あなたと出会うずっと前、お人形さん遊びしてた小さい女の子だったからこれはこれはこれはつまり、愛とか、そういうものの延長線で、二人が一緒になって、なんて馬鹿みたいに世間知らずだと思うけどずっとイメージはしてた!

と、思う。

 


w.お腹が大きくなるのは楽しみだよ。

ママらしく優しい顔つきになるとか、ミルクの匂い、小さな靴下、ニコニコ笑って、それからそう、吐いちゃったりもして。

そういうのも含めて楽しみにしてた。

あれに子守唄を歌ってあげる、ベビーカーを押す、モビール付きのベッド、はらぺこあおむしとかピーターラビットとか。どうでもいい!それが男でも、女でも関係ない。

それにそこにはいつも父親の存在があって、それはどこの誰かも分からない人で

m.僕は?

w.これは私が人生で描いでいたイメージだから。

 


w.そんなものよりも自分のキャリアのことを考えるようになる。自分のキャリア、自分の研究。

でもちょっとくらい現実的にそういうことを考えるようになる、ちょっとじゃないかも。

ちょっとじゃないかも実際には。

でも私は馬鹿じゃないから!何をするにも真っ当な理由、少なくともいい理由が必要で。

なんでかんでも受け入れたりはしないから!それに疑問を持つことは大切なことだと思ってたし、

だから掘り出す、掘り出すじゃない、掘り出すでいっか、あなたがこのことを掘り出すから

 


w.だってずっと小さいままじゃないんだよ?

愛されるその笑顔も、親指をぎゅっと握るその仕草も。これは生きるための術、っていうか持って生まれた技?

私たちはそれを全部理解出来るようには出来てないから、その

m.重大さ?

w.重大さ、そう、重大さ…よくできましたねぇ

それこそ私の人生の目的、目的?

 


w.残りの私たちの人生なにかに捧げるってこと

この先続くこと、家計、人類の歴史。

私はおじいちゃんのことなんかよく知らないしひいおじいちゃんのことなんかもう知らないから放っておくけどそれにそれにそれなのにその人たちの遺伝子、遺伝的なものがまだこの辺りにあってそれが小さな物を作っていて

m.深呼吸

 


w.ずっと小さいままじゃないんだよ?成長して人になる。人になって自分で考えるようになる自分の服を自分で買うようになって家を出てあなたを嫌いになる!

私は考えながら喋ってるだけだから

 


m.帰ってジンでも飲もう?

w.僕が何も言わなかったことにして

 


 


m.氷いらないや、とって

w.地球もよ、地球も。

あなたは私と同じことを心配してる。

m.そう?

w.こう言われてるの。

本当に地球のことを思うなら、本当に人類の未来のことを考えるなら子供を持つべきじゃない。

m.そうなの?

本当に地球のことを思うなら自殺しろだって。でも私はそれはしないから。

この世界には人間が多すぎるのよ。80億もの人間がいる。だから全てが足りなくなるの。一番いいのはこれ以上それに加担しないこと。

私たちみたいな人間は子供を持つべきじゃないの。

m.みたいな、って?

w.車の運転をする、ビニール袋を使う、エアゾールスプレー、アボカドの輸入、西洋文明。

m.考えすぎだよ。

w.そうね、実際私たちのせいじゃないしあまり知られてない。

でももしこの想像上の小さなジョージとかナオミが世界を変えられるかもしれない。

ゴミ捨て場のオムツの量が増えてコンゴ産のギャップベビーのパーカーが増えてCO2排出量が増えるのを抑えられるかもしれない。若しくは森を育てられるかもしれない。木を植える、森ごと植えちゃう。

 


m.世界にはいい人間が必要だ。

今起こること全てのために。

何も考えない人達に任せておくことはできない。何も考えず次々子供を産むような人達、

 


自分たちの愛のキャパシティを。

つまり全ての問題はこれだろ?

 


w.えぇそうね、そう。え?は?馬鹿だから子供産むって言ってる?

 


m.そうじゃない、いや、そういう人たちも、いる。何も考えない人間がまるでネズミみたいに増殖して

w.ネズミ?

m.頭が良くて、慎重で、知識のある人は子供を残そうと思わない。

だから頭のいい人たちの遺伝子は残らない。

だから考え無しになっていくんだ、野蛮に。

 


w.じゃあなに、地球のことを考えるなら優生学不妊化?抹殺?テストするの?誰が?

m.違う違う、そうは言ってない

 


m.反動主義的な言い方になるけど、政治の話がしたいわけじゃなくて、ちょっと待って、言い直すから。

もちろん僕もそうだけど、思慮深い人たちは完璧な状況が訪れるのを待ってる。でもこの世の中そんな完璧な状況なんてないから。

だからこんな、麻薬中毒者やホームレスや通り魔に溢れたゴミゴミした世界に自分の子供を産み落としたくないと考えるんだ。

 


m.だいたい可笑しいよね車に乗るにはライセンスがいるのに誰でも、

w.やめて

m.ライセンスが必要なんて言ってないよ、言ってない。

 


m.ちょっと過激な言い方になるけど悪魔の声を代弁してるだけだから。

産むべきじゃない人たちも、いる。産むべきじゃない。でも大きな損失とは思わないだろう。たとえそういう人たちが、持てなかったとしても?子供を。

 


m.つまり君が言いたいのはこういうことだろ?

僕は君の言葉を続けただけなんだけど。

 


w.病気になりそう。ううん、そうじゃない病気になる私。

m.君は博士課程だろ?僕の言ってること間違ってる?

w.間違ってないしそう思うこともあるけどあなたの言い方まるで病的で、残酷で。

 


m.僕にどうして欲しいのさ。

w.いいから黙ってギュッとして、そうしたらいいと思うの。

 


m.これでいい?

w.…なら養子をもらおう。そうしない?

どうしてなにも言わないの?

m.うん、全く君の言う通り。世界はこんななんだから。

w.恵まれない愛されない子供たちが大勢いる。

m.でも、理不尽だけど僕はそれはしたくない。こんな事言うのは酷い人間だってわかってるけどそうはしたくない。

w.それが私がどうしてもやりたいことだったとしても?

m.その時は話合おう?

w.けどそうはしないんだ?

m.うん。

 


m.子供が面倒を起こしたり賞をとったりしないと目もくれない父親になるんじゃないかーって心配してる。

w.子供を通してしか生きられない母親にはなりたくない。変わらず本を読んで自分で何かをしていたい。

子供を言い訳に馬鹿にはなりたくないの。

m.君は君のお母さんとは違う。

w.あなたはあなたのぱぱとは違うわ。

m.子供と張り合うとか教育する感じじゃなくて遊べるようになりたい。

w.セックスはちゃんとする。壊されたくないもの、わたしたち。

m.お互いに飽きないカップルだっている。

 


m.子供がやりたくないことは無理に押し付けない。

w.ハープのレッスンとか?

m.でも、習ってよかったと思うようになると思うし、自分で考えるようになる。

w.鬱になったり、一人になるまで考え込ませたりはしない。

 


m.秋生まれの子はスポーツが得意!

w.最高のお誕生日会にしなきゃ、とかハロウィンにピカチュウの衣装を作らなきゃとかも嫌。

ピストルもティアラもダメ!ディズニーは何の役にも立たない。

m.学校はめちゃくちゃ。教育委員会に乗り込まなくっちゃ。

 


w.ねぇ、ほらね、私たち話してる。

m.僕達この事考えるにはまだ若すぎる?前は色んなことしてた。動物園行ったり、クラブ行ったり。

w.今も行くよ。

m.いつ?

w.今日は!

m.今日はダメ

w.金曜!

m.金曜は疲れてるよ

w.水曜!

m.わかった

 


 


w.これよ、この感じ!

m.なんて?

w.生きてるってこと!退屈しちゃうでしょずっと部屋にいると!

テレビ!

m.テレビ?聞こえない!

w.ここすっごくうるさいねー!

もう帰ろっか?

 


 


w.まだ足痛い。前はこういうブーツよく履いてたのに。

m.あ、ラマだ。

w.みんなベビーカー押してる。

m.髭のばそっかな。

w.はい、わかりましたはい、新しい人間を作りましょう。私なりに1週間よく考えたの。

m.え?いいの?

w.いやなの?いやなんだ、

m.いい、いいよ

 


 


m.で?君はいいんだよね?

w.ベッド行こう

 


 


w.ちょっとストップ

m.また?もう何週間も待った、もうなし。

w.でももし

m.もしなんてないもしなんてないからもうそういうのやめてよ

w.私たちはしてるわけだから

m.あぁしてる、してるよ

w.最後まで聞いて、あなたはもっとリラックスするべき。これはきっと綺麗で

m.僕は平気だよ準備できてる

w.あなたはそう、そうね。あなたはそう。それにそうじゃないってわかってるけど、あなたが私に対してぶつけてるみたい、憎しみを

m.君に憎しみなんてない、

w.わかってる、わかってるよそうじゃないって

m.君に憎しみなんてないよ

w.わかってるから誤解しないで

ごめんね台無しにしちゃった

 


m.ちょっと歩いてくる。

w.緊張してるの、それにあなただけのせいじゃないから

m.何がせい?なんの?

 


w.私たちトライしてる。してるの。

それって素敵なこと。素敵だけど怖い。

私の身体に、身体にって言うか、私の中で起こることなの。

なのにまるでそんなものないみたいに私たち。

あなたは考えないの?その先、それともこれって私だけ?

 


w.私たちがしてることは、二人の…

人を、一人作るってことなんだよ。

奇跡…奇跡じゃないけど、奇跡、そう、奇跡。その奇跡を私は感じたいの。

 


w.なのにあなたのそのいやらしい目付き。

m.目付きはどうしようもないでしょ

w.殺人鬼やポルノ映画に出てくるみたいなその目付き。

m.集中してるんだ。

w.こわい

 


m.いつもそう思ってたの?あの時

w.違ういつもじゃないほんと時々

m.今言ったじゃない君ってそういうとこあるよね

w.そういうとこ?

 


m.僕は君が欲しくてたまらないときがある。時々たまらなく君が欲しくなる、この動物みたいなおぞましい目で、欲望?わかるよね?君に入りたくてたまらない時がある。声をあげさせたくなる、少しだけ、傷つけたいのかも。そう、少しだけ。それを君も望んでる。

w.そういう時もある、そういう時もあるよ。

m.君を開いてこじ開けて

w.もう大丈夫わかった、わかったから、ちゃんとした文脈で言うなら大丈夫、それは、大丈夫以上。

 


w.そうじゃないの、あなたはその先のことを考えないの?その瞬間だけじゃなくてその先

m.正直言う

w.うん、正直に

m.正直僕はその一瞬のことだけを考えてる。その一瞬は何も考えなくていい。

僕はただペニスで口で手で君を見て、

w.わかった、わかった大丈夫

m.すごい潔癖

 


w.私が欲しいのは繋がり?あなたが私に対して一方的にするんじゃなくて、二人一緒にがいいの。

知ってる?男の人の脳ってCTスキャンみたいな機械で見ると同じように光るんだって、女の人を見てもスパナを見ても

m.どういうこと?

w.ごめん、

 


w.その目がとてもセクシーだと思う時もある、この肩も、声も、重みもそれに危険で

m.危険?

w.どんなふうに私を求めるのか、この世界のことなんかどうでもいい。爆弾が爆発するかもしれない地震も。でもあなたにとってそんなことはどうでもいいの。あなたと私が宇宙で、そんな風に思ってもらえるのがすごく嬉しいの。

私だってそう、大抵そうなる。

 


w.でもたまに、そんなことないってわかってるけどほんとに時々私の脚をぶった切ろうとしてるみたい。

ほらわかる?

ぶん殴って歯をへし折ってゴミ袋に入れて森に埋めるの。

m.まじか

w.いつもじゃないでも時々そんな風に感じるの

m.まじかよ

w.いつもじゃないしほんと一瞬

m.いいよ

w.言うんじゃなかった、黙っておけばよかった

m.いいって

w.最低

 


w.私何言ってるんだろうそんなこと考えたことないのに。

ごめんただこわくて

あーもう、めちゃくちゃ泣くかめちゃくちゃ笑いたい。ねぇ、面白い話ない?

まだ寝ないよね、まだ暫くは。

話せてよかった、もう1回しよう。

 


m.今すぐには無理

w.そうだよね

m.本読んでくる。テレビかな。

w.隣にいて欲しい?

m.いい、少し寝たら?

w.うん、でもさっき、わかってるんだけどさっき

m.オナニーなんてしないから、そのことが言いたいなら

w.やれることはやった方がいいと思うの、だから、お気になさらず

m.勘弁してよ

w.言ってみただけ。

 


m.わかったよ

w.わかった

 


 


m.おはよう

w.おはよう、機嫌いいね

m.もう春だね

w.朝ごはん作ってくれたの?

m.引っ越そう。海の見える家に行こう。みんなそうするんだろ?

庭があって、小さなサッカーゴールも置ける、子供用プール、トランポリン。木を植えるんだ。君の言う通り、やるべき事をやるんだ。

 


w.結婚しよう

m.考えよっか?

w.したくないの?

m.そんな焦らないでさ

w.もういい。コーヒー淹れるね。

 


m.君は働かなくちゃ

w.働くわよ博士号とったら。

m.二人ともってわけには…

w.あのね、全然フェミニスト的じゃないってわかってるけど私たちこのことを真剣に考えるなら何かを犠牲にしなきゃいけないの。

あなたにはもっとフルタイムの

m.僕はフリーランスでいないと

w.わかってるよ、割引でレコードも買えるし、自由に休めるからライブだってできる。

でも私は働けなくなるんだよ、お腹が大きくなったら。

それから1年目はほとんど無理だろうし。

m.子供を持ったミュージシャンだっている。

w.でも成功してるミュージシャンだって必ずしも…

あなたが成功してない、成功しないって言ってるわけじゃないのよ。

あなたの1番のファンは私よ〜、知ってるでしょ。

 


w.とにかく、もう誰も音楽にお金を使わない。

ほんとに結婚したくないの?

 


m.君の体に起こる、ってどういうこと?昨夜話してる時に君が言ってた。これは君の身体に起こるんだって

w.だって私の体に起こることだから。

 


m.君の言い方まるでそれが傷つくことっていうか、暴力とかテロ行為とか

少しいる?

w.いらない、おなかすいてない。

m.まるで恐ろしいことみたいな。

w.それだけじゃないよ、やっぱり少しもらおうかな。

 


wでもそうだよ、こわい。

私はどうにかその感情と向き合おうとしてるの。

m.それは、残念。

w.これは現実なの。どうしたって変わるの、これから起こることと一緒に。

痛いだろうし、不快だろうし、私の考えはとっちらかってもうめちゃくちゃ。

グッと横に広がって、そう、家になる。胸は張って痛くて。萎んで元には戻らない、わかるよね?

 


w.お腹が大きくなるのは楽しみだよ。エコーとかも。

本物の出産見たことある?テレビとは全然違うから。血だらけで、汚くて、ぐちゃぐちゃで。私はちぎれてボッコボコ。

まるで車に轢かれたみたいに。

芋虫が繭になる時ってこんな気持ちなのかも。

m.僕には出来ない、僕には出来ないんだ。

w.あなたには子宮がないもの。

妊娠出来たら変わりたかった?

m.笑うなよ

w.十月十日暖めて自分の体の中から生み出したかった?

m.そうだよ、もう既に僕たちどこか平等じゃないって感じてる。どんな感じなのか実際僕にはわからないし、わかるよねそれは、けど、

なんでそんな顔で見るの

w.自分の不安な気持ちを話してる

m.ごめん

w.いいの、そう言うの嬉しい。美味しい、もっとある?

m.僕のどうそ

w.いいよ

m.もういらない

w.どうしたの?

 


m.タバコやめなよ

w.はい

m.わからないんだ僕には母親になりたいのになんで未だにタバコを吸っているのか

w.なにかの中毒になったことないのよ

m.そのふたつの衝動って僕からすればまるで

w.はいって言ってるじゃない、はいって、だから黙って

 


 


w.がんばって!

m.君のためだよ

w.私たちのため

m.そう言いたかった

w.スーツ似合ってる

 


 


w.どうだった?

m.ピカピカ新品の大企業の歯車

w.すごい

 


 


m.車で送ってくれる?!

w.いったい何本植えればいいんだろう

m.何本?

w.2週間くらい前に木を植える話してたでしょ、してた。

m.そこ左

w.日本からニューヨークまで一日何本の飛行機が飛んでると思う?2550。

m.2550

w.5年間毎日飛行機でニューヨークまで行って帰ってきてもその二酸化炭素の排出量って子供一人持つより少ないの。

m.またそんな風に考えてるの?

w.一万トンのCO2。それってエッフェル塔の重さだから。

エッフェル塔産むことになるんだ。

m.エッフェル塔産まないでしょ

w.子供が2人になったらそれって倍じゃ済まないの。その子たちがまた生み出すんだから。その子供たちの子供たちがって考えるともう指数関数的に増えてくわけ。

 


w.リサイクルだ電気自動車だエコ電球だって言っても私たちみたいな思慮深い人間が赤ちゃん産むのやめない限り地球はめちゃくちゃ。

これってタブー。本当のタブー。

意味ないの。

m.君は今何を読んでるの。だって情報源は徹底的に調べるべきでしょうデマばかりのこの世の中で

w.爆弾地震核戦争ドンと来い

m.もうわかんないよ

 


w.私たちは自分のちっぽけな生活に囚われてみんなを殺してるの。

m.みんなを殺してないでしょ、みんなを殺してないでしょ!

 


w.生理きた

m.あぁ

w.何も悪いことじゃない

m.もちろん、わかってるよ

w.これからタバコ吸うよ。吐くまで吸うよ。けどあなたにとやかく言われる筋合いないから。

m.仕事休もうか?

w.なに言ってんの初日だよバカ言わないで

m.休めるよ

w.早く行って、でも終わったら早く帰ってきて。ケーキも

m.わかった

 


 


w.なにそれ

m.ケーキ

w.寂しかった

m.なんで…いや、ありがとう。

 


m.でも…

 


 


w.最近すっごく変な気持ち離れてる

m.ごめん一緒にいられなくてもうすぐ査定なんだ

w.仕事について行けたらいいのに

m.毎週曜日決めてランチしようか、火曜日

 


 


m.なにそれ

w.サンドウィッチ。ピクニックでもしたいなぁってこんないいお天気

m.やっべ忘れてた

w.芝生に座ってさぁ、日陰見つけて

m.無理なんだ

w.手作りじゃない買ったの。ドーナツとファンタも。

それからドーナツを帳消しにするりんご。

忘れてたってどういうこと火曜日だよ。

m.打ち合わせがあるんだ

w.昼から?

m.僕が提案したんだ

w.サボっちゃえ、あなたが提案したの?

m.僕たちは木を植えなきゃいけない、会社がたくさん、森を作るくらい。

君がリツイートした論文を読んでる。

 


m.転換点はとっくに超えていて今するべきは適応と軽減そしてあとはただもう心の準備。

洪水。干ばつ。ハリケーン。食糧難。水道民営化。大量絶滅。財政破綻。政情不安。戦争。

絶対的な大災害を回避し2030年までもつのか。

 


m.2030年僕たちの子供は小学校すら卒業してない。

w.私は読むのやめた。

m.一晩で半分まで読んだ。ちゃんと読むとかなり面白いよ、いつ

w.セックス。セックスしよ。

散歩して食べて、ドーナツ食べて、それからどっか場所見つけてさ、人が来ない茂みとか、雑木林とか、公園のトイレとか!

m.公園はダメ!

w.サッとできるよ。打ち合わせにも間に合う。

m.何ドーナツ?

w.シュガーシロップ

m.わかった

 


 


w.さて、さてさてさて

m.久々だったね、声でかいし

w.しなきゃだったの

m.どっからでるのその声

w.どういう意味

m.どう言い訳しようかな打ち合わせ飛ばしちゃった

w.また次があるよ

m.あぁ

w.いいことだよ、頑張ってるのはいいこと。

私たちはいい人間だよね?

m.もちろん、僕達はいい人間

w.どういい人間?

m.とにかくいい人間なんだ

w.でも私たちは信じてないでしょ?

良いとか悪いとか、正しいとか間違ってるとか。

m.そう?

w.私たちは悪を信じてない。

m.悪は信じてないよ、僕たちは人を裁かない。理解しようとする、その人の

w.身になって

でもみんな自分が正しいことをしてると思ってる。

どうやったら確かめられる?

m.そんなこと考えない人だっている

w.ヒトラーとかドナルド・トランプとか?

わかった

m.わかった?

w.確信を持たなくちゃ、傲慢なくらい。

m.僕達は確信してる!僕たちは悪い人間じゃない。

w.こういうこと聞いていいよね?

m.もちろん

w.よかった

m.仕事戻るね。

w.うん、愛してる

m.こんなによく考える両親の元に産まれてくる子供は幸せだよ。

w.リサイクルする?歯磨きの時蛇口は閉める?デモに参加する?リサイクルする?

m.自転車に乗る、エコバッグを使う

w.大きなチェーン店じゃなくて小さなコーヒーショップを応援する

m.泥水みたいな味でも?

w.そうだった、ごめん

 


m.また夜ね。温かいお風呂入れてあげる。

それからゆっくり話しない?

 


 


w.もっと熱く

m.わかった、足退けて、火傷しちゃうから

 


w.私たちは良い本を読む、ドキュメンタリーをみる、字幕付きの映画を見る、古典を読む、リサイクルする。

m.僕たちは自転車に乗る、フェアトレードの商品を買う、エコバッグを使う。覚えてれば。

w.寄付する。なに?

m.なにも?

w.寄付する。チャリティーラソンに参加する。1回出たことあるけどまた出るの!

m.僕は何も言ってない

w.寄付する。嘆願書に署名する、記事をリツイートする、税金をちゃんと払ってないところは使わないようにする。

m.僕は何も言ってない

 


m.別に何かを手に入れることに罪悪感を抱くべきじゃないの。俯瞰的に見れば私たち全然贅沢なんかしてない。

プライベートプールとかスポーツカーとか。結構質素に生活してる。

お金を使うのは、食べるものと本とNetflixとたまの休日に出かけるのと家賃。

それにやみくもに使ってるわけじゃない。

 


w.もっと寄付とかできたらと思うけど、もっと貢献出来ればいいのにって思うけど、

m.わかった君は

w.私おかしくなってる?

m.どこか違う領域に行っちゃってる

w.ホルモンの関係で、ホルモン、どこかの化学物質、

 


w.ちょっと座って落ち着いてくる。

 


w.これってどうかな、コンビニってコンドームは売ってるけど妊娠検査薬はどうかな?

m.見てこようか?!

w.聞かないで、言わなきゃダメ?たまにクロスワードを見るような目で私の事みてる

早く行って!見てきてよ!

どうして靴履いてないの?

なんでそんな目で私の事見るの

m.これもホルモンのせい?それとも今はただ感じ悪いだけ?

 


w.これで妊娠してなかったらどうしよう、こわい

m.それってつわり?それともあれが来ない?

w.ずっとちゃんと来てたのに今日何日?

13、14…映画観に行ったのいつだっけ、あなたは気に入って私は途中で寝たあのくだらない映画

m.あの映画好きじゃなかった?!

w.3週間…4週間…5週間あぁだめだもうとっくに来てるはず行って!

何でまだそこにいるの?

私も行く、

タオルとって、

キスして

 


 


m.どれくらい待つの?

w.30秒…1分、2分、3分待とう念の為

m.1分ごとに見てみよう、だったらずっと見てればいいか

w.後で持ってくから

 


w.そこに居たらできない

m.僕の前でおしっこしてたじゃない

w.そうだけどこれじゃ緊張してできない!

m.水持ってこようか?

w.お願い、これってそうだとしたら

m.じゅわーっと出てくるかってことだよね?!

w.説明書には書いてなかった

m.本当にここにいちゃダメ?

w.こんなの神秘的なことでもなんでもないから、プラスチックの棒におしっこかけるだけなんて

m.僕は見ていたい全部、みていたいから、全部

w.わかった、わかったから、水流しといて

m.ジャー?それともちょろちょろ?

w.ごめん

m.いや水出しっぱはダメだよ!

w.ちょっとくらい地球のことかんがえるのやめられない?

 


w.よし

 


w.どれくらい経った?

m.30秒

1分

2分

3分

 


 


m.僕の電話どこ?

w.ご両親のこと嫌いじゃなかった?

m.そんなことないよ

w.そう、私は嫌い

なんていうかウチのとは感じが違うから。

自分たちがあの人たちと遺伝子行動を共有してると思うと、自分の息子の目を通してそこにあなたのお父さんが見えると思うと、なんでもない。ある意味好きかも。

ごめんね、ただ機嫌悪いだけ。タバコ吸ってないし機嫌悪いだけ

学校の初日みたいな、世界がただ大きくなっていく。

 


w.でもまずは最初の電話をして、それから他にも。

m.自分のところに1番に伝えたいんだね?

僕のところより先に?

w.ええそうよ?

 


m.本当に僕の両親のこと嫌い?

w.嫌い

m.絶対にウチに泊まらないよね

w.あなたのご両親はそれなりに立派な人よ。でも調子を合わせるとなるとちょっとね。

泊まりなんかしたら私自分が心配で。

あなたのお父さんの首元にハサミ突き立てちゃうんじゃないか〜って、そんなふうに感じない?

m.えぇ?君の両親に?

w.えぇ。は?なんで私の両親にそんなこと思うの?

m.そんなこと思ってないよ

w.気をつけて!

 


w.なんだろうキリキリする。悪いことしたみたいな

m.悪いことしたなんて思わないで!

これは、そう、秘密、ふたりの秘密だから。

w.そう、秘密。

 


w.背筋がゾッとする。すごい鳥肌、震えも止まらない見て

m.顔色悪いよ?

w.思ったの、ここにはもうあなたと私だけじゃないって。

あなたと私と、それからこれが、今はここに。

半分あなたで半分私で半分全く新しい、

それなのにあなたいつもと全く変わらない。あなたも何か感じてるでしょ?

それとも私がちゃんと見えてない?

m.そんなことないよ。でも、まだしっくりは来てない

w.そうね、わかるわかる。しっくり来てないってどういうこと?

m.覚悟はしてたけど、心の準備はしてたけど、いざこうなってみると

w.衝撃?

m.そう、衝撃。台風の目っていうか。

w.いいのいいの。別にどう感じなきゃいけない、って決まりはないから

m.僕は、幸せ

w.そう、それはよかった。

m.僕は君を見てる、君から受け取ってる、君は

w.騒ぎすぎ?

 


m.君のご両親に電話する?

w.うん

m.そうじゃなくて、するべきなのかな

w.どういうこと?

m.言うじゃない、まだすごく初期だし、言うじゃない、妊娠の4分の1は

w.今考えなきゃダメ?流産なんて言わなきゃダメ?ちょっとくらい無敵で無鉄砲になれないかな?

ちょっともこの完璧で小さな幸せのシャボン玉の中にいちゃいけないの?

 

m.僕たちこの言い合いをやめて、

w.言い合いじゃない。話し合い
m.このままお互いのことを傷つけるんだとしたら僕たち一旦この事は置いておいて、

w.やめてよ爆弾落としといて平和交渉しようだなんて

m.僕たちもう親なんだよ

w.うん、わかった

m.ハグにする?

w.それはまた、今は気分じゃない

m.君のご両親に電話しよう

w.うん、後でいっか、ね。

 


 


m.それで、お母さんなんだって?

w.喜んでたよ、喜んでた

m.けど

w.けどなんてない、けどなんてないから

m.僕とは話したくないって?

w.そんなこと

m.僕におめでとうって?

w.泣いてた

m.嬉し泣き?

w.わからない、なんの涙だろ。言ってたこと本当じゃないと思うの。

m.なんて言ってたの?

w.私があなたを愛してることは知ってる。

m.なんて言ってたの

僕との子じゃなかったらよかったのにって?

w.そんなこと言ってない

m.でも実際君は僕のを妊娠してるんだ。だからとやかく言うなって話だ。

クソ女クソ女クソ女。

w.やめて

m.僕はつまらない野郎だって。君が言ったんだ

w.言ってない

m.放射線についての本を読んでますって

w.言ってない

m.だから食糧難やCO2排出権取引の話をしたんだ

w.確かにそれはつまらない

m.君の本だ

w.ママは何も言ってなかった!

m.電話貸して

w.はい

m.お母さんに電話する、

w.どうぞ

m.お母さんが間違ってるって証明するんだ

w.どうぞ

m.電話するよ

w.どうぞ

 


w.どうぞ!

 


 


w.こっち来て、なにしてるの

m.眠れない

w.目を瞑って、頭のスイッチを切るの

m.何時間もそうしてる。

眠ろうとすると最悪のシナリオが頭の中をぐるぐる巡って。爆弾とか大陸が海に沈むとか、

w.不安なのね。

m.そうじゃない、

w.くだらない映画の観すぎ

m.僕たちは話し合っておくべきだった

w.あのね、こういうことなの、産まれてくるまで分からないの。完璧なのができるまで水に流して初めからなんて私は嫌。

私はなんだって欲しいの。骨がなく生まれても、足がなくても、顔がなくても構わない、ただの皮膚のかたまりが泣き叫んでいるのでも私は構わない。映画のイレイザーヘッドに出てくるみたいなのだとしても私のだから、私たちのだから。

私たちの一部だからだから私たちはそれを愛するようになるし、

そうだよ、私たちは愛するようになるそれがたとえ

たとえどうでも。

 


m.眠らなきゃ

 


m.若い時にもっと本を読んでおくべきだった、もっと色んな人と寝ておくべきだったのかも。

もっといろんなところに行っておくべきだった。これからは大変だからね、

これは終わりじゃない、僕達はまだ若い、わくわくするじゃないか。

 


m.僕のせいで眠れない?

 


m.自分が目を瞑っているのかどうかもわからない。

部屋に転がる物の一つ、ほんな僕のこと誰が見るんだ。

穏やかな顔してたら皮肉だよな、僕の死に顔。

考えずには居られないんだ、これから起こること全部。

それは僕たちが生きている間に必ず起こることだから。

 


m.君が話をするとき、僕は君から目が離せない。

君は正直で、だから時々傷つくこともあるけど。

僕は君というの陽子の核、だよね。

僕はまるでいかりか何かで結ばれてそこから動けないことがあるんだ。

君はまるでお腹を空かせた野生動物。うなりながら僕の周りをグルグルまわってる。

そして君はそこにただじっと立つ僕を信頼してる。でも僕は本当に他にどうしていいか分からないだけなんだ。それを君は勇気かなにかと勘違いしてるんじゃないかって。

 


m.夢を見たんだ、子供が生まれたけどそれは小さな雲だったーって、小さな雷雲。もしくは牙と鉤爪。

 


m.本棚から本を持ってくる、どの本にもに君がアンダーラインを引いたあと。

余白には星が書いてある。

君がハイライトした文をじっと見つめる。

その段落をもう一度読んでみる。

僕には見えない何がこの人には見えていたんだろう?

僕が理解していないことはなんだろう?

 


 


w.寝なさい、

m.今何時

w.いびきかいてたよ

m.何してるの?

w.吐いてるの、気持ち悪い。目の中の血管全部切れたみたい

 


 


w.どう?

m.わかるよ、デカい

w.デカい?私はそうは思ってなかった。

m.ちがう、そうじゃない、わかるよね?

蹴った

w.蹴った、蹴られた

 


 


w.ネットによると私の子宮はグレープフルーツサイズ。どうしてなんでも食べ物で喩えるんだろう。赤ちゃんはレンズ豆の大きさです、ピーナッツ

m.お腹すいてるの?

w.ペコペコ

m.ご飯作ってあげる

w.ベーコンと洗濯洗剤

m.ベーコンだけにしとこ?!

 


 


w.目を瞑って

m.何したの?!

w.子供部屋

m.緑?!

w.ピンクとか青とか黄色はいやだったから

m.大家さんは知ってるの?!

w.小さな木も描いたの

 


 


m.チリチョコレート買ってきた

w.サイコー

m.公立の学校調べてるなんてどうかしてる?

w.知りたい?男か女か、それとも

m.産まれるまで楽しみにしておくべき?

w.それだけで十分特別な日なんだけど

m.楽しみで待てない

 


w.こわいの。

もし愛せなかったら、顔を見ても小指を握らせても愛せなかったら、そういうことだってあるよね?

自分がどうなるか分からなくてこわいの。

m.君は良い親になる

w.分からないじゃない

m.わかるよ

 


w.ありがとう、そばに居てくれて、ワガママ聞いてくれて

 


w.結婚しよう。

m.古臭い考えだって、こういう考えに反対なのも知ってる。

愛してる。あんまり伝えてこなかったけど。

 


 


m.綺麗だよ

w.デブじゃない?

m.デブだし綺麗

w.もっと大きくなるよ、そう、地球みたいに

だから、覚悟しといて

m.わかった

 


w.痛い…

m.なにそれ

w.やだ血

m.病院行こう

 


w.耐えられない

m.外で待ってる

w.ここにいて欲しいの

m.わかった

 


 


w.またタバコ吸えるね

m.そんなこと

w.コーヒー飲むけど小銭ある?

m.鍵貸して

w.私病人じゃない

 


w.これでよかったのよ、私たちの残りの人生誰かに乗っ取られるところだった。

上手くいかないかもしれないのに。

心配で不眠症になるか現実逃避。

増やさなくてよかったのよ、この混雑した世界に迷える人間をひとり。

二人で大きく息をするの。

シャンパン開けよう、飛行機でどっか行こう。

世界経済が完全に破綻する前に自分たちのためにお金を使うの。

暴動があったら参加しよう、ぶっ壊そう、火をつけよう。赤ちゃんが乗ってますシールの付いた電気自動車をみたら偽善者を道路に引き摺りだそう。

自分たちがどんなダメージを与えてるか、

本当にごめんなさい

何がいけなかったの?

 


m.帰ろう?

w.違うって言って。安心してるわけじゃないって、嘘でもいいから。

 


 


m.少し眠るんだ。

 


m.ここにいるよ

君の起きる音が聞こえたから

君は寝ちゃったから、僕がここに運んだんだよ

おやすみ

おはよう

お茶入れたよ

仕事のあとまた来るね

 


m.一日中ずっとそうしてたの?

暗くなってきたね

明るくなってきた

ベッドに行こう

君は寝ちゃってたんだ

起きたら君はいなかった

 


m.もう何日も話してくれてないね

赤ちゃん、乗り越えなくっちゃ

w.やめて

m.僕を罰してるみたいだ

w.お願いやめて

m.僕に怒ってるんだ

w.そうじゃない私、そうかも怒ってるこんなの全部大っ嫌い

 


m.もう一度トライしようよ

w.無理、私は今はあなたの顔を見たくない

 


w.私たち一緒にいるべきなのかな

別れたいから言ってるんじゃない、自分がどうしたいかわからないの

m.僕は自分がどうしたいかわかってる

w.私たちのことを考えるいい機会なのかも。

m.いい機会?

w.あなたにはただ黙って抱きしめて欲しかったけど

ちがうやめて今じゃない

私に言われるからするんじゃなくて、そんなのいらない。

m.ごめん

w.謝ってばっかり、わかってないでしょ自分が何に謝ってるか。

 


w.一人にして

m.一人?

w.そうよ一人、ホームアローン!どうしてあなたは私の言ったことを繰り返すの!

m.ごめんでもまだ考えられなくて

w.考えてよ、

m.必死に追いつこうとしてるけど、時間が必要なんだ

w.助けてよ!

 


m.僕にとっても辛いことなんだ

w.やめてそんなこと言ってないあなたにとってはなんともないことなんて言ってない

m.ヒントがほしいんだ

w.あなたと私は同じ、二人とも同じ

m.少しでいいからヒントがほしい

w.泣かないでよ

m.君はガラスの壁の向こうにいて手が届かないそんな感じだから

 


w.世界にはもっと問題を抱えてる人たちがいる。

こんなのはそこら中でみんな乗り越えてる。

またトライすればいい、それが私たちの本当にやりたいことなら。

m.そうだよ

w.そうかな、全身の皮が剥けたみたい

 


m.他の子とキスした、新人の、派遣の

彼女とっても良くしてくれたんだ、2人で音楽の話をした、それから彼女がキスしてきた

僕は止めなかった

言わなかった僕には、なんでだろう

 


m.君がどれだけ悲しんで怒っていてもそれは僕も感じてることなんだ

僕たちは未来を一緒に見ることだってできてた。なのにそれが突然強盗にあって奪われたみたい。

この馬鹿みたいに怒りに満ちた世界で生きなきゃいけない。

なのに僕の好きな人は、僕の親友は僕のことを見てもくれないし、僕も僕の顔を見ることが出来ない。

君のためだったら腕を切り落としてもいい、目をえぐり出したって構わない。

君が恋しいんだ。

レストランで君の前に座りたい。一緒にワインを開けたい。一緒に映画を観て君の手を握りたい。公園を一緒に走りたい。

もう一度トライしようよ、養子だっていいかも。

どうして笑顔なの?

 


w.久しぶりにスッキリした。

私はずっと悲しい。本当にずっと悲しい。

この悲しさがなくなる日が来るのかもわからない。

 

w.ごめんね、何が必要かあなたに伝えてあげられなくて。わからなかったの、何が必要か。


w.あなたにはただ待っていて欲しかった。我慢強くいて欲しかった。私より勇敢でいて欲しかった。理解して欲しかった。理解していない時でも、一度でいいから引っ張って欲しかった。

流産するってどんな感じか、分かろうとして欲しかった。あなたを必死で守ろうとしてること、気づいて欲しかった。

何より他の子とキスなんてしないでほしかった。

私たちのこと考え直そう。

私たち子供いなくてよかったね。

 


 


m.久しぶり

w.いい感じ

m.君もいい感じ

w.やめて、ありがとう。来てくれてよかった。

m.それは、もちろん。でも驚いたよ、スターバックス?君らしくなかったから

w.他に誰に言ったらいいかわからなくて。

ままあなたの事気に入ってたから

m.嫌われてると思ってた

w.そうね

m.お葬式はどうだった?

w.明日、だから一緒に来て、来る、いや、もし来たいなら

m.是非、君がそうして欲しいなら

w.そうしてほしい

m.聞かなくていいんだよね

w.聞くって何を

 


w.私たち2人とも変わった。タバコ辞めたんだ。

m.へぇ

w.あんなの最低、今は調子いい。

m.僕は吸い始めた。

w.なんで

m.かっこいいかなって

w.ダメだよ

 


m.学校は?

w.うん、終了

m.じゃあ博士だ

w.まぁね

 


m.僕の親父も死んだ、3ヶ月くらい前

w.そう、知らなかった

m.僕はわからなかったから、君が

w.そうね、

もうすぐ私たちだけが取り残されてく。

もう随分大人になっちゃって。

ちょっとだけ心に刻む。カシャ

m.大丈夫、

w.あー、最高なにやってんだろ。ぐしゃぐしゃだよ。自分に約束してたんだけどな。

m.大丈夫、君は大丈夫だから

w.あなたは大丈夫?体調は?仕事は?全部大丈夫?派遣の子は?

m.あれは、そうじゃなくて、全然そういうんじゃなくて、あれは、あの時だけ

w.そう

m.君と、あぁなってから、残ってなくて。直ぐにって言うのは。

君は?

w.ほんとにこの話聞きたい?私は聞きたくない。あなたのあなたの、セックスライフとか。

m.そうだよね。

w.つまり一緒にいるわけじゃないのね、派遣ちゃんと

m.違う、違うよ今一緒にいるのは

 


w.そう、そっか。私なに期待してたんだろ

m.期待?

w.天気の話とかし出す前に帰るね

m.めちゃくちゃだよな

w.え?あぁ、めちゃめちゃだよ

m.どこも閉まってる。都会はもう対応出来なくなってる。

w.すぐ倒れちゃう。

m.え?

w.脱水症状?だから水を持ち歩いては居るんだけどすぐ無くなっちゃって、2本持ち歩くことにしたんだけどとにかく重くていつも水をこんなに。

m.わかるよ。

 


m.昔は何も考えない人に腹を立ててたけど、今はその人たちのことがよくわかる。

自分にはどうにもできないことは心配しなくていい。

また音楽始めたんだ。友達のバンドで。打ち込み系ってやつ、最近の流行り。

 


m.僕たち、君と僕がああなってから、僕はどんどん馬鹿になってる気がする。

目が覚めたみたい。こんな風になるんだって。

どの本を読んだらいいか分からないし、どうやって考えるのかも忘れた。今はほとんど読まない。運転だってすると思う。

いや、それは馬鹿だな。

そうじゃない、つかれてるわけじゃない、寝てるだけなんだから。

運転してる時だって、誰が運転してるのかわからない。

自動運転の車に乗ってるみたい、まるでゾンビ。

20分前のことも思い出せない。そんな日が何日もある。

でも今は、君と、こうして

 


 


w.さて、さてさて、最悪

m.僕は

w.最悪

m.僕は後悔してない

w.そう、え?

m.後悔してないなに?なに?

w.私は浮かれちゃったみたい一瞬だけ忘れてたから、彼女のこと

m.僕は

w.大丈夫わかってるから

m.僕は考えてなかった

w.話をしてて、そういう感じになって、少なくとも私はそうだから

m.そういうこと、そういうこと。けど

w.けどってもうやめない?

少しだけここに寝転がって、昔の私たちに戻った振りをして。

新聞を取りに行って、近くのカフェでランチして、ダーツしたり。本の話とか、私の説明が悪いとか我が強いとか。わかんない、老人の自発的安楽死。あなたの靴下とかまだ引き出しに取ってある。

息が詰まりそう。ここ息が詰まる。窓開けたいんだけど外も空気悪くて。

あなたと別れてから誰とも寝てない。言わなくていっか。いいの、いいのあなたが2人と寝てたって。

え?もっと?

m.だって君と別れてもう

w.いいの、何人?

m.知りたい?

w.知りたい、やっぱり知りたくない。

努力してみたの、飲みに行ったり。でもあいつ、最悪だった。

教えてくれなくていいから彼女の名前。

m.(彼女じゃない)

m.フィアンセ

w.そう

 


w.もう会うのはやめよう

 


 


w.びっくりした顔してる

m.もう会わないって言ってたから

w.なのに会いに来ちゃったなんでだろ

m.雨だよ?!

w.私変わった

m.変わった?

w.見た目?輝いてるって言うのかな

m.それってもしかして

w.そう、考えてきたのはここまで。

ここから先はあなたが男らしくどうにかしてくれるかなって。

スーパーマン私はここよーって

中に入れてくれない?びしょびしょなの。

あなたがなにを言ってもこれは産まれてくる。ズドンと落ちてぬるぬるで産後はもがき苦しむの、

せめて中に入ってもいいかな。

m.後で話せないかな

w.喋るの?

m.君のところに行くから

w.彼女ここにいるのね、私最低、行くわ

 


 


m.ここにいると思った

w.どうして?

m.ほかは全部見たから

w.私のことよくわかってるのね

m.夜こんなところにいたらダメだよ

w.あの辺のトイレでセックスしたよね、打ち合わせサボらせちゃったよね

m.僕はするべきことをする君のことをサポートしたいと思ってる

w.サポート、ご立派

m.ちょっと黙って、そうやって喋られると考えられなくなるから

w.いいえ黙らないあなたは何も考えなくていいあなたは思ってることを言えばいい感じてることを言えばいい

m.フィアンセに話さなきゃ

w.それから?

m.いいから黙って!

ごめん、ちょっと考えたいんだ、ありがとう

それから、わかった、よし…わかった

結婚しよう

w.いや

m.なんで

w.理由一、あなたは他の子と婚約してるから

理由二、こんなのごめんね悲しき人類20万年の歴史で最もロマンチックじゃないプロポーズだから

理由三、したくないから

だいたいあなたの意見なんか聞いてないどうでもいいから。

私はこれをこのままにするかも決めてないから。

m.そんなことしないよね

w.決めてないの

あなたはそう、死んだらいいと思ってる、問題は片付けちゃおう、問題なのこの、生まれてもない人間が!

あなたが死ねばいいのに。私が死ねばいいのに。

地震が来ればいい津波

m.君の選択ならなんだって支える

w.フィアンセに電話して

m.電話じゃ言えないよ

w.愛してるのね

m.電話で言われるなんてあんまりだろ

w.元カノを孕ませる男にはもったいない。

m.いい子なんだ。

w.彼女をとっても愛してるのね。

m.あぁそうだよほんとに、フィアンセなんだ、3ヶ月後に結婚する、

w.帽子買わなきゃ

m.結婚する、はずだった。当たり前だけどもう出来ないから。

w.それで?うちのソファーで私とヤッてるといも彼女を愛してた?

m.あぁ

w.私の中にいれてる時も彼女を愛してた?

m.あぁ

w.つまりあなたの精子が私の卵子に受精してる間もあなたは彼女と一緒にいたのね。

泣きすぎて目の下の血管全部が切れた

m.彼女を愛してたんだ!

w.何も考えてなかっただけよ

m.彼女にバレると思わなかった!

 


w.わぉ!ならなにも問題ない。あなたは彼女を愛してた。幸福とか彼女のことよりもほんの少しだけ射精するのが大事だっただけ。

そしてそれは遂に出産という奇跡を起こす。

成長してたくさんの女たちがめそめそ泣くことになる。

電話貸して。彼女に電話する

m.だめだ

w.あなたとセックスした時、あなたがとても寂しそうに見えた、私に会いたかったんだって。見たことも無いあなたのフィアンセは最低な女に違いないって。でもきっも素敵な人なんでしょ。

電話貸して、彼女に謝りたいの。

m.いやだ

w.ずっとずっと彼女が夢見た結婚式。そこに私が現れて、このクソみたいなお腹は一分一秒大きくなっていく。

彼女の拠り所は全てデタラメ。

彼女きっと飛び下りるよ。下敷きになった電車のアナウンス。私ならそうする。そうするから。血管を全部開いて大きな赤い文字で壁に書くの助けてくれるな!電話貸してよ!

m.いやだ

w.私なんでこんな人間になっちゃったのいい人間だったのに今じゃ悪魔。そう、私は悪魔電話貸して本気で言ってるの。

m.いやだ

w.そうね、あなたの言うとおり私には上手く出来ない。

m.彼女と話してくる。今しっかり。

彼女と話したあと君の部屋に行っていい?

w.どうして

m.そうしたいから、それに、他に行くところがない

w.わかった

 


 


w.血出てる

m.彼女がブチ切れて、蹴って殴って馬乗りになって

w.彼女にやられたの?

m.耳の下を指輪が

w.いいじゃない、彼女にはその権利あるよ。その権利ある。

あなたの体を使い物にならなくするくらい。

あなたのちんこを切り落としたっていい。

m.でもこれは僕だけのせいじゃ

w.ええ実際そうよそう、あなたのせいよ、

m.これは僕たちの

w.私は彼女と婚約してない

m.僕ももうしてない

w.参ったな、参りました

 


m.で、僕たちどうするの。普通に戻る?

w.普通?普通ってなに、なによ私たちカップルじゃない。私たちは私たちは戻れない。前みたいになんて。

ここから新しく始めなきゃ。もしそうなったとしたら。

私はあなたのこと知らない、あなたはもう全く知らない人。嘘つきで未熟で悪い人

m.でも思ったんだ

w.やめて、こんな風に時速200キロで飛ばされても考えられないから一息つかせて

m.考えたらなにもしなくなるから

w.するってなに、なにを

m.これ、僕たち

完璧な状況じゃない。でも飛び込んでみようよ。考えすぎると何もしなくなってしまうから。

君と離れてる間僕は楽しむことを忘れてた。

いつだって君を愛してた、いいね?

僕達はお互いを傷つけずに一緒にいる方法を見つけられなかった。僕はそれを見つけたい。

君は僕の心を切り裂くようなことはやめなきゃいけないし、僕はもっとまともな人間らしく行動する。

聞かなくても何を考えてるかわかってるかわかって欲しかった、僕の頭の中にいれてほしかったって、今なら君が何を言って欲しいのかわかる。それは僕が考えてることと同じだから。

 


m.僕たちは一緒に年をとる、笑う、振り返る。だってまるで違う人生みたいだろうから。

それから話をする。

正しいと思うことをすればいい。自転車でどこへだっていく。もう飛行機には乗らないここにいればいい。

森を植えるんだ。本気だよ。

君と僕。君と僕、それからこの小さな点。

地球に解き放たれようとしてる一万トンのCO2。僕たち三人で。

いいね?

w.ありがとう、それが聞きたかった。

考えてみる。

 


 


w.どんどんはやくなってる

m.2分おき

w.ここにいて、こわいの

 


m.カメラ忘れた

 


m.すっごくかわいい

w.抱かせて

m.もちろん

w.私たち家族だね

 


m.すごく疲れてるんだ

w.あなたの番でしょ

 


m.この子も連れてく?

 


w.この子もできるようにならなくちゃ、どの本にもそう書いてある!

m.だね

 


m.全教科いい成績

w.ほんとにすごい

 


m.カメラ忘れた

w.ほら!きた!

 


m.泣くなよ

w.お泊まりしたことないのよ

 


w.あの子にそんなもの見せないで!

m.大丈夫だよ

 


m.あの子と話しをしてくる

w.父親から言ってもらわなくちゃ

 


m.週末出かける?

w.あの子が出発する前に

 


w.カメラ持った?

 


m.備えておかなくちゃ

w.言われてるほど悪くはならないわ

 


m.あの子から連絡がない

 


w.フライトは全てキャンセル

m.すごく暑い

w.地球はめちゃくちゃ

 


m.あの子すっかりかわった

w.役に立ちたいのよ

m.僕達なら大丈夫

w.私もあの子にそういった

 


m.よくある手術だよ

 


m.歳を取ればこうなる

w.あの子が送ってくって

 


m.僕はきっと良くなる

w.こわいの

m.君はとっても勇気がある。

君は、大丈夫

 


w.あの子がホームを見つけてくれたの。クラスとかもたくさんあって、アートとか。

あの子の近くだからここからはうんと遠くなる。

 


w.時々あの子に叱られるの。どういう感じかわかるでしょ?

 


w.たくさんの人が私に怒ってる。今こうして生きている私たちに。

あの人たちが何に怒ってるか、何にそんなに腹を立ててるかわからない。

 


w.あなたの森は無くなってしまった。

もうニュースは見ないけれど、状況はどんどん悪くなる。

全てが灰に覆われていく。

 


w.あの子に埃を立てるなと言われる。ぶつのよ。

もう疲れた。

 


w.でもわたしは大丈夫。

色々言うけど聞いててね。

 


w.お花を取り換えよっと。

 


w.あなたと話がしたい。

 


w.今日は昔みたいに気持ちがいい。涼しくて、サイレンの音もない。

 


w.寄ってみただけ。

もうあと何回ここにこられるか分からないから。

 


w.愛してる。